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WHOとアルコール関連問題

2005年5月のWHO勧告と日本洋酒酒造組合の対応等

WHOは2005年5月「アルコールの有害な使用に起因する公衆衛生問題」に対処するための決議を採択し、WHO加盟国に対しアルコールの摂取による弊害を減らすための活動を展開し、さらにその結果を2007年5月の総会に報告することを求めました。
この勧告を受け、日本洋酒酒造組合が取り組んできたWHO対策は次のとおりです。

WHO対策に関するグローバル組織への参画と共同

1.GAP-G(Global Alcohol Producers - Group)への参画

WHO勧告への対応をグローバルレベルで行うために、世界の酒類業界が結束し業界自主規制への対応を基本理念とした組織「GAP」が結成され、欧米の主要メーカー団体から参加の呼びかけがあり、日本からは当組合とビール酒造組合が加入することになりました。
GAP-GはWHOのアルコール決議に対する業界主張のまとめとWHO理事国への理解度を高める活動を積極的に展開しており、グローバルレベルでの今後のWHO対策の方向が示されるものと思われます。

2.自主規制に関するアジア・太平洋地域ワークショップ(2006・6・19~20開催)への共催

このワークショップは国際的なアルコール政策に関するシンクタンクである国際アルコール政策センター(International Center for Alcohol Policies,ICAP)と当組合並びにビール酒造組合が協力して行なったものです。
会議の冒頭当組合佐治理事長の挨拶等が行われ、引き続き広告の自主規制に関する各国の事例紹介等の情報交換が行われました。これらはいずれもWHOに対し業界自主規制の有効性を訴える貴重な機会となりました。
特筆すべきは、厚生労働省、国税庁の担当官がパネラーとして所管するアルコール問題への対応等について述べたことであり、このワークショップが業界のみならず関係官庁、医療業界、マスメデイア等広いレベルで高い関心を集めたことが伺えます。
最終日には、アルコール飲料の責任ある広告と販売は、酒類業界全体の優先課題であり、それを業界の自主規制によって達成していくことを趣旨とする[東京宣言]を採択して成功裏に閉幕しました。

2007年5月のWHO総会

2007年5月のWHO総会において、スウェーデン等を中心とする42ヶ国から共同提案が出されました。その内容は、アルコール問題は法規制等、何らかの規制をもって対応すべきであるとするものでした。
これに対し自主規制こそが迅速かつ効果的であるとする日本をはじめ欧米諸国からの反論が提出されました。
議論は紛糾し総会最終日までもつれこみましたが合意に至らず、結局、2008年5月の総会まで引続き検討を行うこととなりました。

2008年5月のWHO勧告と今後の対応等

WHOは、2008年5月の第61回総会において「アルコールの有害な使用を低減するための戦略」を採択しました。今回の決議は、2年後の2010年第63回総会にWHOのアルコール問題削減戦略をまとめ上げるための基本的な考え方を合意したものです。
決議では、加盟国ごとの社会、宗教、経済事情に応じて、アルコール悪用による害の削減をエビデンスに基づき立案すること、その際酒類業界にも意見を求めることが明記されています。
今後は、WHO各地域(日本は西太平洋地域)における合意と、それに基づく国ごとのアルコール問題削減策の策定に焦点が当てられることになります。
当組合としてはこの決定後も引き続いてアルコール問題への取組みに対応していくことは当然ですが、当面の対応等は次のとおりです。

  1. GAP-Gへの参画継続
    GAP-GがWHO地区理事会や執行理事会、更に主要国への理解度を高める活動を積極的に展開していくことを期待し、今後もGAP-Gへの参加を継続し、それに伴う所要の経費を負担する。
  2. 酒類業界全体で定めている広告宣伝に関する自主基準について、適時適切な見直しを行っていく。
  3. 20歳未満の飲酒問題については、いわゆる缶チューハイの表示の自主基準を推進する。
  4. 飲酒運転撲滅や妊産婦に対する注意表示については、従来の取組みを継続していく。

2009年におけるWHO対策

1.GAP-Gへの参加と協働

日本洋酒酒造組合は、これまでアルコール関連問題の削減は、それぞれの国の実情に合わせた業界の自主規制によることが効果的な問題解決策であるという考えの下、ビール酒造組合とともに、GAP-Gを通してWHO事務局へ業界意見の反映に努めてきました。
本年も、GAP-Gに参加しその活動への拠出金1,069万円を負担しました。

2.国際的なCSR活動への参加

GAP-G会員企業が中心となり酒類企業としてのCSR活動を世界の重点国で展開することを合意。飲酒運転対策、酒類のマーケティング活動自主規制、違法酒(密造)対策の三テーマで、選択された対象国において活動支援を行うことを決定しました。
2010年より具体的なプログラムに参加するため、約500万円の所要額を予算計上しました。

3.アルコールの有害な使用の削減に向けた世界戦略への対応

WHOは、平成22年(2010年)5月、第63回総会での「アルコールの有害な使用を削減するための戦略」に関する決議採択を目指し、各WHO拠点での協議を踏まえた戦略草案の最終案を2009年12月に発表しました。この草案は2010年1月のWHO理事会に諮られますが、この草案の内容についてGAP-G内で検討し、協力して各国の関係省庁へ意見、改善要求案を訴求しました。
国内においては、他の酒類業団体と連携し、酒類の広告宣伝等に関する自主基準の改正等を進め、業界自主規制の有効性に努めてきました。

2010年5月 WHOが「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択

この戦略では、アルコール関連問題を10の領域に分類し、各領域の説明、政策、措置等を指針として示しています。
そして、これらアルコール関連問題への対応は、①「それぞれの加盟国の宗教的・文化的背景、公衆衛生に関する優先順位、問題解決に対する資源、能力、受容性等を十分考慮することが必要である」、また、②「アルコールの有害な使用を低減する政策は、保険医療機関だけでは対応は困難であり、各種の団体・機関の相互協力が重要である」と明記しており、アルコール関連業界の関与が不可欠であると述べています。
日本洋酒酒造組合としては、今回採択された世界戦略の指針に則り、アルコールの「有害」な使用の低減に向け、GAP-Gグループへの参加継続、国際的CSR活動、酒類の広告宣伝に関する自主基準の見直し、20歳未満の飲酒防止対策、飲酒運転の撲滅等の各種施策に引き続き取り組んでいくこととしています。